関係者からのメッセージ

2010年5月13日

「終わりじゃない!」

近赤外分光器 安部 正真

「はやぶさ」の地球帰還が間もなくです。先日「はやぶさ」再突入・回収運用隊の結団式がありました。多くの関係者が集まり、「はやぶさ」帰還運用・カプセル回収運用に多岐にわたる人がかかわっていることを改めて感じました。運用室前の廊下には、多くの方からのメッセージや、新聞・雑誌の報道記録等が掲示され、多くの方に注目されているミッションであることも日々感じています。
探査機自身の帰還に向けた運用だけでなく、回収運用に向けた地上側の準備も、打ち合わせや実作業が毎日のように行われています。このような雰囲気は、「はやぶさ」では、打ち上げの時、イトカワ着陸の時にもありました。大きなイベントを前にして、多くの人が一つのことに向けて集中していく雰囲気です。特有のドキドキ・ワクワク感があります。
「はやぶさ」の地球帰還の時もそうでしょう。ぎりぎりまで、自分のやるべきことはできたのか、チームとしてやり残したことはないか、という不安が続きますが、最後には、十分な確認はしたはずだという自信をもち、神のみぞ知る、という悟りの境地にもなりながら、その瞬間を迎えることでしょう。

「はやぶさ」が無事帰ってきたら、「はやぶさ」には「お疲れ様」と言いたい。ただ、「はやぶさ」の残した魂を胸に、我々は感傷に浸ることなく、その次へと続けていきたい。これで終わりじゃない!「はやぶさ」の成し遂げたことから始まることはたくさんある。「はやぶさ」が送り届けるカプセルの中には、小惑星イトカワの表面物質がわずかでも入っているはずだ。小惑星は太陽系のはじまりの頃の情報を記憶した天体で、その表面物質を地球物質による汚染を極力抑えた状態で分析できるチャンスは、「はやぶさ」で初めて実現されることになる。その貴重なサンプルが入ったカプセルを日本へ搬送し、サンプルを取出し、サンプルを分析する作業は、再突入・回収運用の後にも続く。「はやぶさ」に続く、次のサンプルリターンミッションも「はやぶさ」の経験を活かして是非実現したい。我々はそのことに向けても着々と準備を進めている。


筆者紹介

安部先生は月と地球の相互関係の研究から、小惑星の地上観測、鉱物や隕石の分光観察、そしてサンプルを受け入れる設備のメンバーでもある、太陽系小天体のエキスパートです。「はやぶさ」の運用にも、打ち上げ当時から携わっているメンバーの一人ですよ。(ばあや)

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