関係者からのメッセージ

2010年6月17日

「はやぶさ」の帰還を祈る

ミネルバ担当 齊藤 浩明((株)IHIエアロスペース)

“小惑星ロボットを作ってみないか”
12年程前に中谷先生からいただいたお話が始まりでした。ミネルバ(MIcro Nano Experimental Robot Vehicle for Asteroid)という女神の名前を頂戴したのもつかの間、システムの実現性に確信を持てないまま開発に着手していったのを覚えております。

重力が10-5G(地球の10万分の1!)の小惑星上をどのように移動するのかが当面の課題でした。宇宙研の先生方とのディスカッションの中から生まれた、“弾み車の原理を用いて飛び跳ねよう”との吉光先生のアイディアを検証することになり、地球の重力をキャンセルするため部屋の垂直の壁を小惑星表面に見立て、上から紐で吊るしたミネルバの模型が壁から離れていくかを確認したのが始まりでした。
その後、微小重力落下実験施設での数多の落下実験、民生部品がどれ位小惑星環境に耐え得るかを確認するための各種試験等を隔週ペースでこなしていったこと等が思い出されます。

ミネルバに当初与えられた質量割り当ては1kgでしたので、“1gでも軽いものを!”が合言葉で、軽い民生品を探しまくったとか、軽量化しすぎたため剛性が持たず再設計したりとか、コネクタを割愛したため確認の度に半田ごてを握っていたりとか・・・かなり無茶な設計をしました。結果として若干目標を上回ってしまいましたが、宇宙研の先生方、会社や関連企業の仲間に支えられ、綱渡りのスケジュールの中、完成に漕ぎつけることが出来ました。

ミネルバの開発を通して数々の得がたい経験を積むことができたこと、そして応援メッセージにあるように皆様に広く愛されたプロジェクトの一員であったことなど、エンジニアとして本当に幸せなことだと感じております。
ミネルバは不幸にして「イトカワ」には降り立てませんでしたが、「はやぶさ」の姿を届けてくれました。今でも広大な宇宙の彼方から、ミネルバが見る筈だった「イトカワ」の砂を、会社の同僚が担当したカプセルに積め、地球まで届けてくれることを静かに見守っていると信じてやみません。


筆者紹介

(株)IHIエアロスペースの齋藤さんは、超小型ロボット「ミネルバ」開発における立役者の一人でいらっしゃいます。
ミネルバは「はやぶさ」に搭載された、小惑星表面を飛び跳ねながら探査する超小型ロボット。厳しい重量制限や宇宙環境に対処すべく、民生品を駆使して作り上げられたわずか500gのミネルバには、開発にあたり東奔西走された齋藤さんたちの創意工夫が詰まっていました。(delta-V)

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