関係者からのメッセージ

2010年6月17日

「はやぶさ」帰還への想い

ミネルバ担当 足立 忠司((株)IHIエアロスペース)

いよいよ今日、「はやぶさ」が地球に戻ってきます。「はやぶさ」プロジェクトに参加させていただいた者として、「はやぶさ」の帰還を見守ることが出来ることに万感の思いがあります。
MINERVA開発を担当しました私にとりまして、まさにMINERVAの母親の帰還であります。今日、「はやぶさ」は燃え尽きますが、これほど多くの夢と希望を運んできてくれた探査機は無かったのではないでしょうか。そして、必ずよみがえると信じております。

私の「はやぶさ」との係わりは、日本初の小惑星探査機で、日本初の小惑星上を動き回れる小惑星探査ロボット開発してもらいたいとの要請からでした。この小惑星探査ロボットがMINERVAです。
月、惑星ローバを研究しておりました私にとって、宇宙に行けるロボットが開発できるチャンスに燃えていた日々が思い出されます。しかし、開発実態は、ロボット設計に必要な小惑星表面に関する情報が少ない、微小重力下で動作させる機構等の知見がない。許容されるロボットシステム質量は僅か。開発費が限られている。等々、過酷なものでした。
しかし、このような、大きな課題にチャレンジするなかで、官民のチームワークが強固になり、知恵が生まれ、結果としてMINERVAを送りだすことが出来たと思います。

未熟児のような小さなロボットが、母親である「はやぶさ」に抱かれて活躍の地である「イトカワ」まで運ばれたのです。 結果は、想定外の状況により「イトカワ」には着陸できませんでしたが、MINERVAはしっかりと目覚め、「はやぶさ」の太陽電池パドルの撮影後、けなげにも自らの温度データを「はやぶさ」に送りつつ、「はやぶさ」から離れて行きました。
今も太陽の周りを回りながら、母親が地球に帰る為に壮絶な努力を見守っていたように思えてなりません。そして、今日、無事地球に辿りついた「はやぶさ」を見届け、安心することでしょう。

「はやぶさ」を帰還させるため努力させてきた関係者の方々のご苦労に敬意を表しますと共に、「はやぶさ」がよみがえり、MINERVAが小惑星上で活動できる日が来ることを願ってやみません。


筆者紹介

(株)IHIエアロスペースの足立さんは、超小型ロボット「ミネルバ」開発における立役者の一人でいらっしゃいます。
月・惑星ローバの開発で培われた技術力と創意工夫で足立さん達が作り上げたミネルバ。残念ながら放出時の条件が悪くイトカワ地表には到達できませんでしたが、ロボットとしては完璧に動作し、健気にも「はやぶさ」の写真を撮って送ってきました。今も太陽の周りを静かに回っています。 (delta-V)

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