関係者からのメッセージ
2010年6月18日
「はやぶさ」からの最後の信号
スーパバイザ・軌道決定 竹内 央
この画像は、6月13日 22:28頃、「はやぶさ」が地球との最後の交信を終え、通信のための電波の信号が消えてゆく瞬間を捕らえたものです。
全ての仕事をやり終えた「はやぶさ」は、このおよそ23分後に、大気圏に突入し燃え尽きました。
「はやぶさ」は、7年間の間ほぼ毎日(一時音信不通の時期もありましたが)、このような電波の信号を使って地球と通信を続け、貴重なデータを送り続けてくれました。
私は、このような電波信号の波形を詳細に解析することにより、探査機が飛行している位置を求める技術の開発を行っています。( ISASメールマガジン第208号「探査機の軌道決定」)
探査機の位置を正確に推定するためには、世界中の遠く離れたアンテナ同士が協力して電波信号を受信する必要があります。そのため、必然的に、海外の宇宙機関との間の協力関係が重要になりますが、「はやぶさ」という世界に冠たるミッションの存在があったからこそ、世界中の一線級の研究者達が本気になって付き合ってくれたということを実感しています。「はやぶさ」を通じて、世界中の研究者と深い関わりを持ち、数多くのものを吸収する事が出来たことは、私にとって大きな財産になりました。
「はやぶさ」からの電波はもう届くことはありませんが、「はやぶさ」を通じて獲得した技術は、宇宙航行における日本の自律性・自在性を確固たるものにするための礎として、「あかつき」やIKAROS等の次のミッションに、しっかりと継承されていくものと確信しています。
筆者紹介
竹内さんは、「はやぶさ」のスーパーバイザを務めるとともに、海外局と連携した軌道決定において中心的役割を果たしました。
竹内さんの専門は探査機の位置と速度を正確に求める「軌道決定」。「はやぶさ」では国内外の何台ものアンテナを使い、クエーサーという星からの電波と探査機の電波を比べて精度良く位置を測る「相対VLBI(DDOR)」の取りまとめを担い、次世代の宇宙探査技術の礎を築き上げました。
(delta-V)
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