関係者からのメッセージ

2010年4月20日

涙、涙、涙・・・

プロジェクトサイエンティスト 吉川 真

すでに使い古されている言葉ではあるが、小惑星探査「はやぶさ」のミッションを一言で言うと、「未知・未踏への挑戦」である。世界初の小惑星サンプルリターンミッション。人類史上初の地球・月以外の天体からの離陸。人類が初めて見た大きさ500mの天体の素顔。予想もしていなかった数々の困難とその想定外の克服。まさに、未踏の地に足跡を残しながらの未知への挑戦の連続であった。

しかし、ここでは、敢えて「はやぶさ」の科学や技術の成果は棚上げしておいて、全く別の世界初について触れてみたい。そのキーワードは“涙”である。涙と言っても「涙なしで語れないはやぶさ運用」というような涙ではなく、「感動の涙」である。

人工衛星や探査機のミッションを行うと、そのミッションの紹介ビデオを作ることが多いが、「はやぶさ」ではちょっと毛色の違うビデオを作成した。その名も「祈り」(http://spaceinfo.jaxa.jp/inori/index.html)である。「はやぶさ」のためにジャズミュージシャンの甲斐恵美子さんによって作曲された音楽をバックに、「はやぶさ」ミッションをCGと実写を交えて物語風に映像化したものである。言葉によるナレーションはないのであるが、ツボにはまると涙が出てくる作品になっている。これに、さらに輪をかけて感動的に仕上げた作品が、大阪市立科学館が中心になって作成したHAYABUSA -BACK TO THE EARTH- (http://hayabusa-movie.jp/)である。プラネタリウムの全天周映像として上映されているこの作品は、一般の人でも見終わった後で涙を流している人が多いという。

単に機械である探査機しか出てこないこれらの映像作品で、中身も科学や技術的な話であるのに、涙が出てくるほど感動するなんていうものは、世界でも初めてであろう。人が生きていくとき、感動的な体験を重ねることが重要であるが、その感動は、科学や技術からも得ることができるのである。そもそも、科学や技術というのは、人間のためにあるもの・・・ 「はやぶさ」の最も大きな貢献は、このことを改めて私たちに教えてくれたことかもしれない。


筆者紹介

吉川先生は「はやぶさ」プロジェクト・サイエンティストであると同時に、多くの講演を行うなど、「はやぶさ」の広報活動のエースと言うべき方です。(IES兄)

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