関係者からのメッセージ
2010年5月28日
今から、お迎えに行きます!
カプセル回収班長 西田 信一郎
「はやぶさ」は、ロボットなのだろう。(関係者が知恵を絞って練りに練った)指令は地上から送られているので、異なる意見の方もいらっしゃるが、アトムのような常に完全自律のロボットは殆ど存在しないのが現在の地球の実態である。そして、宇宙探査ではロボットが人間に似た姿かたちをしている必要性は殆どない。
「はやぶさ」は多数の部品で構成されているが、個々の部品には当然の事ながら特性のばらつきがあるし個性がある。当初の予定を大幅に上回る7年もの間、惑星間空間で厳しい環境に曝されて、持ち堪えられるか、要所で期待どおりに機能するかは、H/Wの個性に依存すると言える。従って、はやぶさが地球まで帰ってくるのは、はやぶさの個性(=意志)によるものと考えても不自然ではない。
K教授:「イトカワへ行って、カプセルを地球に持ち帰ってくるのだぞ。」
はやぶさ:「はい、わかりました。」
ロボット三原則を遵守して、打上げ時に言い付けられた指令を果たすべく、幾多の困難に遭遇しても、満身創痍になっても、負けずに頑張っている。黙々とスクラップを片付けるウォーリーのように、黙々と地球を目指して踏ん張っている。「はやぶさ」は、他ではお目にかかれない「ど根性」を見せてくれている。ここまで帰ってきただけでも最上級の敬服に値すると思う。
約10年前、私が光学実験室で光通信機器の実験をしていた頃、お隣の防振台上で、「はやぶさ」搭載機器の調整が(苦労しつつ)行われていた。そんなところを目にしていたので、「はやぶさ」をずっと応援していた。なので、「はやぶさ」のためにオーストラリアへ行く役目が回ってきたことも、とても光栄だと思っている。
年々増加している宇宙デブリ(軌道上の宇宙ゴミ)を低減するためには、地球周回の低軌道の人工衛星はミッションを終えると早期に大気圏に再突入し燃え尽きさせるのが基本である。「はやぶさ」は、惑星間軌道上の小惑星探査機でありながら、地球大気で本体を燃え尽きさせて、そのお手本を示してくれようとしている。そして、後継探査機のために様々なデータを蓄積させてくれようとしている。
昨年6月、オーストラリアの落下予定地点近傍に行ったところ、見渡す限り地平線まで身長以上の高さの起伏の荒れ地が続き低い樹木が繁っていた。「ここに落ちたら、見つけるのに苦労しそう。」というところである。「はやぶさ」カプセル回収の現地滞在メンバーは、光学観測にJAXA外部から加わっていただく方々も含めてピークには40名以上に達する。
毒へび、毒ぐも、サソリが棲息する砂漠に逗留し、「はやぶさ」帰還の万全の準備を行い、「はやぶさ」が届けるカプセルの帰還を待ちます。
カプセル回収運用現地メンバー、皆で「お迎えに行きます!」
筆者紹介
西田さんは、「はやぶさ」カプセル回収班長として豪州での回収作業の指揮を執ります。
国際宇宙ステーションの「きぼう」ロボットアームや「おりひめ」「ひこぼし」ロボット実験、月探査ローバなどに携わってきた宇宙ロボットのプロフェッショナルにして大の天文ファン。南半球の満天の星の下、万全の体制でロボット「はやぶさ」の7年越しの帰還を出迎えます。(delta-V)
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