関係者からのメッセージ

2010年5月31日

「はやぶさ」よ、苦しいだろうが、踏ん張って地球に帰ってきてくれ!

カプセル再突入・回収運用隊実施責任者 長谷川 義幸

1.人間は視点を高くしたい。

人間はなぜ宇宙に魅かれるのだろうか。
遠い昔、海で誕生した生命は長い年月をかけてリスクをかけて陸へあがった。そして、二足歩行の人間が生まれた。陸地だけを動く能力はすばらしいものがあったが、もっと高いところから鳥のように地上を見たいとの欲求が強くなってきた。
フランスの写真家ラダ-によって、1858年ガス気球で80m上空から地上を写真撮影に成功した。その写真は、翌日に大センセーションを巻き起こした。誰も見たことのない光景は、人々の好奇心を大いに揺すぶった。それ以来、人間は上空のあらゆるところから地球の写真を取るようになった。人々は、もっと高いところから地球をみたいと思うようになった。
1968年、アポロ8号の宇宙飛行士は月へゆく途中、地球を撮影、人間が見る初めての地球全球のカラー写真で、青い水の惑星であることを実感でき、地球を大事にしなければと思う感動を与えた。150億年前、宇宙は生まれたという。地球も宇宙誕生の歴史の一部である。我々人間も、宇宙の一部である。宇宙を特別視してはいけない。どうやって地球はできて、どうなってゆくのだろうか?

2.宇宙探査は人類と地球の発展のため。

小惑星探査機「はやぶさ」も、宇宙探査の一環としての活動である。
宇宙探査は最先端の宇宙科学技術を必要とし、現在の科学技術を牽引するものの1つである。宇宙探査は、人類と地球の発展のためであり、宇宙活動と地上活動との連携で地球誕生の歴史と未来を明らかにしようとするものである。
「はやぶさ」は、本格的な惑星探査に必要な新技術を獲得するためと、小惑星の観測という科学的な意義も加えられている。その新技術は、イオンエンジンによる惑星間航行、自律的な小惑星への誘導制御、微小重力でのサンプル採取技術、そして、惑星空間からの地球への精密誘導制御による帰還である。

前者の技術はすでに実証した。科学観測も成果を挙げた。推進系や姿勢制御系の大きな不具合をいくつも乗り越えてきたが、まだまだ予断を許さない状態は続く。地球に下りてくるには、大気との摩擦によって機体表面が非常に高温になる。はやぶさの回収カプセルは秒速12km以上。惑星軌道間から直接、大気圏に突入するため、スペースシャトルに比べて発生する熱は一桁以上大きいと考えられている。
先端技術に挑戦する姿は、我々の人生と照らしあわせて身近なものになっている。地球の重力のくびきを断ち、小惑星に探査にでかけたわれわれの分身が、ちゃんとした状態で帰ってきてほしいと思う。世界に先駆ける日本の科学技術の発展のためにも、宇宙探査を本格的に進めるためにも!

皆様の暖かい応援をよろしくお願いします。


筆者紹介

長谷川義幸執行役は、JAXA月・惑星探査プログラムグループの統括リーダにして、「はやぶさ」カプセル再突入・回収運用隊の実施責任者です。
国際宇宙ステーション・日本実験棟「きぼう」プロマネとして日本の有人宇宙活動の新たなステージを切り開いた長谷川さんは現在JAXAの月・惑星探査を統括する立場。「きぼう」を成功に導いた確かな実行力と熱いハートで、「はやぶさ」シリーズの推進に向けて鋭意尽力中です。(delta-V)

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