関係者からのメッセージ

2010年6月4日

旧姓「MUSES-C」の頃

元・MUSES-C軌道計画・M-V-5号機軌道計画担当 山川 宏

久々に昔の資料が入ったファイルを取り出して、MUSES-C時代に検討した内容をまとめた技術資料のタイトルを以下に列記してみました。学会発表資料や投稿論文を除外したすべて当時の内部資料です。また、M-Vロケットに特化した資料も省いています。

これを見ると、1993年から1997年にかけて集中的に検討していることがわかり、以降は思い出したように取り組んでいることがわかります。サンプルリターンの計画立案であるために、打上げ、惑星間航行、小惑星接近、惑星間航行、地球大気再突入まで、全てを扱うことができて、非常にわくわくしていたことを思い出します。
また、探査対象の小惑星がNereusや1989MLから1998SF36に変化していったこと、1995年には対象をNereusとして地球スイングバイの利用を提案したこと、密かに彗星や他の小惑星とのフライバイチャンスを検討していたこと、徐々に、軌道計画と電気推進の仕様が連動して収束していったこと等がわかります。
また、この頃は、月ペネトレータ探査計画 LUNAR-A、火星探査計画PLANET-B(のぞみ)と同時平行的に取り組んでいたのですが、仕事の時間配分に苦労していました。

1998年以降は、だんだん、金星探査計画PLANET-C(あかつき)、水星探査計画BepiColomboの立ち上げに力点が移っていったのですが、もちろん、2003年5月の打上げまで、M-V-5号機の軌道計画・航法・誘導は、MUSES-Cの惑星間軌道計画と連動して取り組んでいました。

こうして早くも17年経ったことになりますが、今願うのは、ISAS/JSPEC運用チームの苦労が報われて、「はやぶさ」の帰還とカプセルの回収が成功することのみです。

1993年
エントリープローブの飛行環境について 1993.12.3
エントリープローブの大気圏突入点について 1993.12.22
アステロイドランデブーフェーズのシナリオの一案 1993.12.28

1994年
エントリープローブの軌道設計/熱環境 1994.1.21
アステロイド周回軌道の経年変化の一例 1994.1.26
M-Vによる打ち上げから地球脱出までの軌道 1994.2.1
小惑星探査計画における候補天体 Ver.1.1 1994.11.1
小惑星探査計画:電気推進に関するメモ(その1) 1994.11.4
小惑星探査計画における候補天体Ver.2.1.〜1989MLについて〜1994.12.12
小惑星探査計画における候補天体 Ver.1.4 1994.12.15

1995年
小惑星探査計画における候補天体 Ver.3.0 1995.3.1
小惑星探査計画における候補天体 Ver.4.0 1995.3.28
推進系のドライ重量に対する影響 1995.4.6
小惑星探査計画における候補天体 Ver.5.0 1995.5.3
MUSES-C:彗星フライバイオプションの可能性 1995.5.30
MUSES-C 地球帰還時のジオメトリ 1995.8.3
MUSES-C 地球−NEREUS遷移軌道におけるオプション 1995.12.3
MUSES-C以降のSOCCERタイプミッションの1例〜Wirtanenを対象として〜 1995.12.1
MUSES-C計画における地球スイングバイの利用 1995.12.5
小天体ミッションに関するサーベイ 1995.12.30

1996年
MUSES-C以降のSOCCERタイプミッションの1例 1996.1.10
2005〜2015年までの小天体探査計画 1996.1.12
多数回小惑星フライバイミッション 1996.1.24
M-Vによる打ち上げから地球脱出までの軌道 1994.2.1、1996.3.15
MUSES-C 電気推進システムの見直し 1996.7.5、1996.7.11改訂
MUSES-C 低コスト化について 1996.7.11
MUSES-C 1989MLバックアップケースと探査機重量 1996.7.11
MUSES-C 1989MLバックアップケースと探査機重量 1996.7.18
MUSES-C地球帰還軌道について〜地球帰還1日前から大気突入時まで〜1996.7.30
MUSES-C 電気推進システムの見直し案(その2) 1996.10.17
MUSES-C 電気推進システムの見直し案(その3) 1996.11.19

1997年
MUSES-C 電気推進システムの見直し案(その4) 1997.1.16
MUSES-C 電気推進システムの見直し案(その5) 1997.2.24
MUSES-C IES System Comparison (ver.1.3) 1997.5.28

1998年
MUSES-C Re-entry Operations Plan, 1998.3.18
MUSES-C 軌道計画 1998.7.21

1999年
post-MUSES-C小惑星族探査計画の工学的検討 1999.9.24

2000年
MUSES-C バックアップとしての1998SF36探査の可能性 2000.4.21
MUSES-C2の探査対象の探索 2000.5.11
2010年前後の小惑星探査 2000.7.24
M-V Orpheus SEP Sample&Return Mission 2000.7.25
小惑星族マルチフライバイ & サンプルリターン計画に関する軌道検討と試料採集 技術 2000.12.20

2004年
複数小惑星からのサンプルリターン軌道計画の初期検討 2004.7.26


筆者紹介

山川宏先生(現・京都大学)は、「はやぶさ」とそれを打ち上げたM-Vロケット5号機の軌道計画とミッション設計に携わられました。
山川先生が軌道設計した宇宙機は「ひてん」、GEOTAIL、「のぞみ」 から「あかつき」、ベピ・コロンボまで多岐に渡ります。京大異動後も常に宇宙研のミッションに温かい眼差しを注いでくれる山川先生の趣味の一つが山歩き。「食料と時間の最適化」という一種の軌道計画として楽しんでいるとのことです(delta-V)

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