関係者からのメッセージ

2010年6月10日

「はやぶさ」地球帰還に際し

三菱電機 臼田宇宙空間観測所アンテナ運用担当一同

臼田、鹿児島宇宙空間観測所のアンテナ設備を担当させて頂いておりますが、思い返せば「はやぶさ」の打上げは、臼田現地では、少ない限られた要員で時には、実質一人で全体の面倒を見るという、余り例の無い体制下での打上げ〜初期運用ミッションでした。

「イトカワ」到着前を含め小さなトラブルは、有りましたが、「イトカワ」へのタッチダウンを成功させた後、キャリアが喪失してしまうトラブルに見舞われ、返事をしてくれない「はやぶさ」に対し、軌道決定より計算された予報角度のみを信じ、答えが戻って来る事を祈りながらアンテナを向け測定器で、返信の電波を探し続ける日々が約1ヶ月以上もの間続きました。

この時、話し相手のアンテナを目標(「はやぶさ」)に向ける担当としては、本当に予報値の方向にアンテナが向いているかどうか気が気では有りませんでした。このままミッションが断念されると、誰もが考えていた矢先、奇跡的にも、「はやぶさ」からのキャリアが復活、皆活気付きました。

「はやぶさ」プロジェクトの先生方、システム関係の方々の御尽力により、テレメトリデータの復調も可能になり、一段落していた頃に、臼田64mアンテナではの受信の周波数域内への雑音の混入が取り正され始めました。
弱々しい「はやぶさ」からのキャリアは、僅かな雑音の増加でもテレメトリデータの復調ができなくなり、今後の運用に影響を及ぼすとのことで、設備御担当の先生をはじめ受信機の担当・我々と全員で何回も原因調査を実施し、アンテナの中の狭い給電部近くに入ってハンマーで色々な所を叩いてみたりと色々な事をしました。
苦労の甲斐があり、今となっては笑い話と成る様な発生源も判明し処置が施されました。

結果的に「はやぶさ」とは7年間もの間、お付き合いすることになりました。深宇宙探査ミッションとしては「さきがけ」と並び長期に亘ったものではないかと思います。

地球まであと少しです。「はやぶさ」が『ただいま』と帰って来るまでアンテナを向け、見守って行きたいと思います。

カプセルが無事回収されますようお祈り申し上げます。


筆者紹介

三菱電機のアンテナ運用担当の皆さんは、臼田宇宙空間観測所で「はやぶさ」を見守る64mアンテナの運用を今日も確かな技術で支えておられます。
衛星通信から「ALMA」等の巨大宇宙望遠鏡まで、アンテナのエキスパート・三菱電機さんが開発・運用に携わってこられた臼田の64m深宇宙アンテナは、まさに探査機との対話の最前線。3億km彼方の探査機からのかすかな声を拾う技術の粋が、日々の対話を支えています。(delta-V)

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